弔  辞   大恩寺責任役員 中村 敬

   *去る六月十一日 大恩寺門徒総代の高野正義さんが亡くなり

   十四日、十五日大恩寺にて通夜、葬儀が営まれました。葬儀の折、

読まれた中村さんの心に残る弔辞です。

 

若葉の緑もますます色を濃くする水無月の六月、貴方は、咲き誇る

石楠花や白百合の花に見送られるようにして十一日の夕方五時過ぎに、

夕日がひと際大きく赤くなって西の空に沈む時、誘われるようにして

静かにお浄土に還られました。

 ついこの間だまで奥様にお会いして病状も快方に向かっていると聞

いていたので、突然の訃報に接した時は、一瞬わが耳を疑ったほどで、

ただただ驚いています。高野さんとの出会いは十年足らずでしたが、

思えば、貴方が手塩にかけて育てられた最愛のお嬢さんの美しい花嫁姿

を見ることもなく、僅か二十一歳の娘盛りで亡くすという、人生最大の

悲しみに遭われてから、大恩寺にご縁を結ばれてお寺参りに努められて

いました。法座の折にはいつも、奥様と一緒に熱心聴聞しておられまし

た。 その真摯なお姿と温厚誠実な人柄と、株式会社損保ジャパンの営

業部長として培われた豊富な知識と経験で、物事を冷静に判断し的確に

誘導する手腕は、大恩寺にとっても得がたい人材として、住職始め多く

人から推されて平成十五年から門徒総代に就任され、ご活躍を期待され

ていました。

しかし好事魔多しの例え、その後間もなく大腸がんという辛い病魔の

侵されて、平成十七年に開腹手術をされ、病院で療養に専念されていま

しただ、奥様の献身的な看病も空しく、人生まだ是からという六十歳を

最期に往生を遂げられました。

 

大恩寺のとってもかけがえのないお大事なお方を亡くして残念でなり

ません 今なおお在りし日の面影が眼前に彷彿としていますが、これか

らは尊いみ仏となられた貴方に、お浄土から私たちをお導き下さるよう、

お念仏申してお別れの言葉とします。             合掌

 

  この時、二女ほとみさんは妊娠九ヶ月でした。周りの人達はひとみ

さんの身体のことが心配でした。 でもよかった、よかった。 七月十四日、

無事、元気な女の赤ちゃんが生まれました。 名前は朝香(ともか)ちゃんです。