一口法話

改革、改革、改革。諸行無常の響きあり。  岡本信之

 世界中で今も昔も改革、改革、改革。改革とは、社会制度や機構、組織などをあらため変えること、よりよくあらためること、と広辞苑にあります。 今、日本で問題になっているのが、社会保障、税の一体改革。この改革という字の類似語がまたたくさんあります。改新、改正、革新、改造、改変、革命、変革、見直し、チェンジ、イノベーション、維新等々。日本の歴史を繙いてゆくと、大化の改新に始まって江戸時代の享保、寛政、天保の改革、そして明治維新を経て現代にいたるまで、政治改革、農地改革、産業改革、行政改革、構造改革、教育改革、宗教改革、等々まだまだ永遠と続きます。ということは、人間はいつまでたっても一つのことに満足することができない、というか、もっといいものを、もっといいことをと尽きることのない欲望のなかに生きている姿が見えるのです。それが決して悪いということではありませんが、何故かそれが本当に大切なことなのだろうかという疑問も湧いてきます。

 「祇園精舎の鐘の声、諸行無常の響きあり。沙羅双樹の花の色、盛者必衰のことわりをあらはす。奢れるも人も久しからず。唯春の夜の夢のごとし。」ご存知の平家物語の冒頭のことばです。この世の中のあらゆるものは変化、生滅してとどまらないこと。この世の一切の物事は変転きわまりなく、不変なもの、常なるものなど存在しない、いつの時代にあっても、変わることのない真実の教え、仏法にあうことが大切だと言い切った人の言葉に私たちは耳を傾ける必要があるのではないでしょうか。

 「行く川の流れは絶えずして、しかももとの水にあらず。よどみに浮かぶうたかたは、かつ消えかつ結びて久しくとどまりたるためしなし。世の中にある人とすみかとまたかくのごとし。」鴨長明の方丈記の言葉です。後を読んでみると生死流転を繰り返すこの世にあって、永遠に消えることのない仏の智慧と慈悲のともしびに照らされ生きる喜びを教えられます。 

聖徳太子は「世間虚仮、唯仏是真」「篤く三宝を敬え」この世のことはすべて虚妄でありただ仏のみが真実である、心を込めて仏、法、僧を敬え、と。また親鸞聖人は歎異抄の中で「煩悩具足の凡夫、火宅無常の世界はよろづのことみなもてそらごとたはごとまことあることなきに、ただ念仏のみぞまことにておはします。」 死ぬまで煩悩の炎が燃え盛っている凡夫、火に包まれた家のように、すべてのものがたちまちのうちに変転する世の中のものはみなそらごとたはごとであってまことのものは何一つない。ただ念仏のみぞ変わることのない真実である、と言い切っておられます。

 改革、改革もいいけれど、もっともっと大事なことがあるんじゃないのかしら?

 

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