一口法話

      有名人の死              岡本信之

 

十二月五日、歌舞伎役者の中村勘三郎さんが五十七歳で亡くなった。色々な分野で活躍しておられた方だったので、多くの方々の驚きとその別れを惜しむ声が今でも尽きない。八十九才で亡くなった私の母が晩年よく言っていたことがある。「みーんな先に逝っちゃた。寂しいよー。」長生きをすればするほど、肉親や友人との別れを多く体験しなければならない。長生きをするのがいいのか、先に逝くのがいいのか、何とも言えないが、自分ではその時を選ぶわけにはいかないのだから、人それぞれ今あるいのち終わる時をそのまま迎えなければならないのだろう。誰が悪い、何が悪い、こうすればよかった、ああすればよかったと後悔しても詮無いことだ。 今頃よくBSテレビで「寅さん、男はつらいよ。」の映画を観る。出演者のほとんどが今はもういない。寅さんの渥美清を始めとして、おいちゃん役の下条正巳、森川信、松村達雄、おばちゃん役の三崎千恵子、御前様の笠智衆、タコ社長の太宰久雄、その他、志村喬、大滝秀治、小林桂樹、船越英二、マドンナ役の大原麗子等々。

他人事ではない。私もいつか必ずその日がやってくる。しかし心配無用。私のごとき凡夫を必ず助けると誓って下さる阿弥陀さまのお慈悲の中、まことに頼もしく有難いことである。このいのち終わる時まで精一杯、御恩報謝のお念仏を声高らかに相続してゆきたいものである。

 

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