一口法話 岡本信之
夫々の悲しみ秘めて寺に集う
法話聞く座の友ら優しき
平成六年に亡くなったご主人の葬儀がご縁で大恩寺にお参りされるようになられた婦人会会員の宮崎正子さんの詠まれた短歌です。数年前に脳梗塞で倒れ、今は会話もできない状態で病院に入院しておられます。娘さんたちが八十八歳の米寿を記念して去年の暮れに、短歌集「愛」を製本され、寄贈下さり、大恩寺の宝物にしたいこの短歌に巡り遇うことができました。
大恩寺の法座にお参りして下さる方の多くが、大切な人を亡くした悲しみや、人生の色々な問題や悩みを背負っておられます。夫々の悲しみや悩みを抱えつつ、ご法座のご縁に遇う中に、微笑みと優しさをお念仏に教えられていく喜びがこの歌に現されています。宮崎さんのその心に触れて、住職としてこの上ない喜びと感動を受けました。先日お見舞いにお伺いした折、耳元で「お念仏申しましょう。」と声をおかけしたら、頷いて下さったようでした。お念仏は最後の最後まで大きな安心と喜びを教えて下さいます。
住職と共に唱える讃仏歌 御堂にひびく春の彼岸会
讃仏歌合唱の時は若やぎて 楽譜読む目のまだ確かなる
宮崎正子