お布施について

　少し字数をかけてお布施について説明させてください。

　これを読んでくださっている皆さんにはお布施とは料金ではないことを知っていただけるとありがたいです。ときどき「お経料」という言葉を見かけますが、あれは造語であり俗語です。また、お布施は僧侶の「小づかい」でもありません。食事代や車代を含めて受け取ったものは全てお寺へ納めております。だから僧侶が「お預かりします」とお布施を受け取ることがあると思います。それはお布施をお預かりして必ずお寺にお納めいたしますというところからくる言い方です。

　もともと布施とはインドのdāna（ダーナ、檀那）に原意をもち、喜捨(きしゃ)とも訳される仏道修行のひとつです。布施をすることによって、自身が執着を離れることや相手に幸せを与えることを目的とします。布施には財施(ざいせ)、法施(ほうせ)、無畏施(むいせ)の三施があり、財施とは信者が寺や僧に財物を施すこと、法施とは僧が信者の為に法を説く（施す）こと、そして無畏施とは説法によって不安を取り除き安心を施与されることです。いずれにしても、喜捨と言われるごとく、「～してあげた」と思う気持ちをもったり、見返り（お礼の言葉すらも）を求めてはいけません。それどころか仏道修行のひとつですので、布施をした側が「私の布施行を受け取っていただいてありがとうございます」とお礼を言うべきものです。

　「そんなのは一般の常識では通用しない」と思われるかもしれませんが、仏教の世界が一般の常識で回り始めることを「世俗化」とか、「なまぐさ」とか、「堕落」と表現します。仏教が仏教であり続けるためには妥協してはいけない一線がしっかりとあるのです。ただ、仏教をあまり知らない人に仏教側の常識を押しつけることもあってはいけませんので、そこは時と場合に応じて僧侶が自覚をもって対処するべきです。

　大恩寺に最も多く寄せられる質問が、「お布施はいくらくらい包めばいいでしょうか？」ではないかと思います。そしてこれが僧侶としては一番答えにくい質問なのです。こちらは「できる中でしていただけばいいですよ。」と答えますが、先日友人から、「それってできるだけ多く包めってことだろ。おまえはそう思って無くても言われた方はそう受け取るよ。」と言われて反省をしました。一方で、布施の内容（多くの場合が金額）は僧侶の方からは絶対に指定してはいけないものでもあるのです。僧侶やお寺に対する敬いから「具体的に言ってくださるとありがたいです。」と言ってくださる方もありますが、僧侶として、大きな選択をせまられる言葉でもあります。

　長々と書いてしまいましたが、大恩寺には法事のお布施に対する「料金表」はありません。お布施をいただいた後にお寺の方から「少ないです」と連絡することもありません。ただ、どうしてもいわゆる「相場」を聞きたいときにはお寺に電話をして聞いてください。本当は相場なんてものは存在しませんがある程度の範囲の中でお答えさせていただきます。

　そして、お寺にお納めいただいた全てのお布施は、寺院の護持、仏法弘通のために大切に使わせていただきます。

　最後まで読んでくださってありがとうございました。